秩父夜祭祭遊記①宵宮 ぼっちと見る日本三大曳山祭

やあ、オレだ、ヤカタだ。オレは今絶賛テスト勉強中だ。15時までに民法の小テストを受けなくちゃならん。そんなオレの頭の中では世紀の大舌戦が繰り広げられていた。天使「ギリギリまで勉強するんだ、単位落として地獄を見るぞ!」悪魔「何言ってやがる。小テストが低くても期末で頑張れば何とかなるだろ?地獄万歳!」天使「あァ?期末舐めてんのか?前回の小テスト3点(10点中)だったろ?」悪魔「でも前期の債権総論はそれで何とかなったじゃねえか。お前だって早く秩父に行きたいだろ?早く行っちまえよ。なるようになるさ」天使「それで単位落としたら釣り合わねえだろうが!」ナマケモノ「お前ら寝てろ。秩父も小テストもどうでもいいだろうがカスどもめ」さるぼぼ「・・・」飛騨人「秩父に行きたいとは聞き捨てならんな。お前も飛騨人になるのだろう?」民法の精「あうあうー、ボクのこともわすれないでやってほしいのですぅー」悪魔「食ってやろうか?羽虫が」さるぼぼ「・・・」蔵王大権現「お前ら、あの光を見なさい。」妙見菩薩「(光の中から現れて)私は秩父神社の神です。私は一年に一度、武甲山の神でおられる龍神様と逢引をすることを許されております。その日が明日、大祭の日であります。しかし、龍神様には正妻のお諏訪様がいらっしゃいます。そこで彼女に明日の逢引の許しを請うのが、本日、宵宮の日なのです。しかも今年は三年ぶりの開催でして、もう長い間あの人とお会いできずにいます(←多分嘘)。今年こそ何とかして奥様にお許しをいただきとうございます。そのために、どうかあなた方のお力添えをいただけないでしょうか。」一同「うん!ならしょうがない!!」オレはニッコリと笑った。

かくしてオレはそのままのノリで小テストを受け、勢いそのまま西武線で秩父へ殴り込みに行ったのだった。

飯能で各駅停車西武秩父行に乗り込むと、また例のごとく先頭車両の一番前の窓にかじりついて秩父路の景色を堪能していた。あまりにもベッタリと張り付いているもんだから、途中の駅で上り電車待ちをしているときに運転手が振り返って戦慄の表情を浮かべたのをオレは見逃さなかった。なんか申し訳ない気分になった。ごめん。

くそ長い正丸トンネルを抜け、しばらくして西武秩父駅に着いた。ホームに降り立った瞬間、突如轟音が鳴ったので危うくひっくり返るところだった。16時の号砲が鳴ったらしい。もー、びっくりさせるなよ。オレは小さい頃から大きな音に極端に敏感なのだ(ピストルを使う運動会では終始泣き喚いていた)。改札を抜けたオレの目に飛び込んできたのは雄大な武甲山、ではなく、所狭しと並んだ食べ物の出店であった。とてもお腹がすいていたので、とりあえず秩父名物『おっきりこみ』をいただくことにした。とてもうまい。野菜も肉も麺(といっても餅みたいなものだが)も勿論美味いが、スープがとてもおいしかった。

申し訳程度に武甲山を拝んだ俺は、西武秩父駅にある地酒売り場の前に佇んでいた。この男、地酒飲み比べをするつもりである。秩父もまた、酒どころである。日本酒だけでなく、ワインやウイスキー、ビールなども醸造しているようだ。三種の地酒のみ比べを注文。矢尾本店の秩父錦、武甲酒造の武甲正宗、秩父菊水酒造の秩父小次郎である。秩父錦からいただくと、芳醇な香りがこれでもかというほど広がった。ここまでまろやか且つ、ジューシーな広がりを持つ酒は今のところ類を見ない(当社比)。たぶんこれが嫌いな人はあまりいないであろう。お次に武甲正宗である。秩父の名峰武甲山の名を冠するこの酒、秩父錦と打って変わってキレの良い酒である。旨味とキレのバランスが秀でており、じんわりと米のうまみを感じつつも喉元を過ぎれば消えてなくなる。優等生である(当社比)。秩父小次郎、コイツは困った暴れん坊である(当社比)。武甲正宗以上の旨さでオレの舌を斬りつけてくる。キレなどという概念を力技で切り伏せ、胃に収めた後もジワジワと余韻が残る。

酒を飲んでいたら一生進みそうにないので、後ろ髪を引かれる思いで秩父神社に参拝することにした。

秩父夜祭祭遊②へつづく・・らしいよ?