飛騨高山旅行記④ 灯ろう流しと飛騨の味

2022年11月9日

やあ、オレだ。ヤカタだ。オレは今とてつもなく頭が痛い。平湯温泉から高山駅に向かうバスに乗っていたんだが、途中で寝ちまったらしい。カーテンも閉めずに強い西日が照り付ける中、ずっと寝ていたんだから大変だ。起きたら風邪気味なのも相まって、頭の中で太鼓が鳴ってるって寸法よ。うーんうーん窓も締め切ってあるし、早く外の新鮮な空気が吸いたいぜ。すがるような思いで乗り換えNAVIタイムを開いたら、タハ―――――★あと30分もあるなんてよぉ、神はオレっちを見捨てたもうたのかよ。こいつぁ平湯温泉発地獄行ってわけだ。じゃあな、お前ら。オレの友達になってくれてありがとうな。そんなこんなで幻覚を見ているうちに高山濃尾バスターミナルに着いた。

前述のとおり、死にかけていたオレは一刻も早くホテルのベッドで横になりたい。魂が肉体を離れつつある体に鞭を打ち、這うようにして高山グリーンホテルにたどり着いた。怒涛の勢いでチェックインをし、ホテルマンの説明もそこそこに、ぬるりとベッドに潜り込んだ。

19時五分前に目が覚めた。その時には頭痛も収まっていて、体調は安定していた。今日は8月19日。19時半から宮川で灯篭流しがあるのだ。ホテルの前の通りを東へ歩き出す。高山本線をまたいで高山陣屋の方角に向かう。ホテルから15分弱ぐらいで中橋についた。灯篭流しはこの中橋から始まる。高山陣屋の向かいにある朱色の橋で、よく写真に写っているので見たことがある人も多いのではないだろうか。橋から宮川をのぞき込むと、臨時で設置された足場から灯篭を流しているのが見えた。川一面に灯篭が広がっているというわけではない。限りある灯篭を少しずつ流していく。灯篭が一列になって下流へと流れていく様を見ていたら、つい川沿いを歩いて追いかけてしまう。何本か下流の橋まで来たところで諦めて、灯篭が闇に消えていくのを見守っていた。

しばらく余韻に浸っていたら、まだ夕食を食べていないことを思い出した。どこかしらの店はやっているだろうという軽い気持ちで歩き出したのだが、なかなかやっている店が少ない。このままだと埒が明かないので、居酒屋のような、ひっそりとした店に入った。「なないろ」というお店らしい。中に入ると、外から見たひっそりとした感じとは裏腹に、アニメのキャラクターのフィギュアがずらりと並べてあり、奥にあるスクリーンにはゲームのプレイ映像が延々と映し出されている。文字通り店主の趣味が爆発していた。カウンター席に着いたオレは迷わず高山ラーメンを頼んだ。それと飛騨のソウルフード(らしい)漬物ステーキがあったのでそれも頼んだ。高山の食文化の双璧を前にしてオレは唸り声を上げる食欲を解き放った。高山ラーメンは昔ながらの醤油味。だがしょっぱいと感じることはなく、ちょうどいい塩加減だった。麺は太くも細くもない。ただただ美味い。漬物ステーキ(略称漬けステ)はどうかナイフとフォークを使ってステーキのように切り分ける。漬物の下にはチーズがひいてあった。漬物だけだと味気ないが、そこにチーズが入ると満足感でいっぱいである。普通にうまい。飛騨に来たら是非食べてほしい。是非食べてほしいんだけども、都民のオレの舌にはしょっぱすぎるのだ。前半はうまい!うまい!と言いながら(言ってない)食べていたが、後半は少々きつかった。二人で一皿がちょうどいいかもしれない。飛騨の冬は厳しく、野菜は漬物にして保存するしかなかった。それをおいしく食べようと考案されたのがこの漬けステだ。少し物足りず、口直しに甘いものが食べたいなーと思っていたら、メニューの裏にさるぼぼアイス(ミルク味)なるものが。これは食べないわけにはいかねえ。柔らかいので丁寧に袋を開け、アイスバーを食べる。うまいですねえ。柔らかいのでとても食べやすく、優しいお味である。甘さもちょうどよく、しつこくない。ワンピースフィギュアに囲まれながら飛騨の食を堪能したオレは大満足で店を出た。