飛騨高山旅行記⑥ 飛騨と見る高山の朝

おはよう。よく眠れたかい?オレは寝れたゾ。折角なんで窓を開けるゾ。そしたら生憎の曇り空なんだゾ。ムカついたから、全裸で窓の外に向かってポージングしてやったゾ。いいゾ~これ(いいとは言ってない)。まだ朝食はやってないけど、風呂は空いてるゾ。でも、露天風呂に入った瞬間雨が降ってきたんだゾ。世の中おかしくないっすか?なんで雨降るんすか?

今日の朝食は洋食にしたので、ホテルの中にある洋食屋に向かった。高山グリーンホテル内には洋食屋も和食亭も、中華料理屋もあるようだ。昨日は気が付かなかったが、ホテルのロビーに高山祭の屋台(山車)の模型が飾ってあった。かなり存在感があるのに気が付かなかった。まあ、死んでたからね。

食事亭に着くと、すぐに席を手配してくれた。洋食はバイキングだ。飛騨の名物も食べてみたいなあ、でも今日は洋食だから食べられないだろうなあ、と諦めていたが、洋食なのに和食コーナーもある。もちろん飛騨名物も。「朴葉味噌」も「こもどうふ」も置いてある。素晴らしい、ありがとう高山グリーンホテル。滂沱の涙を流しながら節操なくパンやら肉料理やらを大量に盛り付けて胃に流し込んでいたら、飛騨名物を食べる頃には腹が膨れていた。仕方がないのでこもどうふだけ食べてみた。味のついた木綿豆腐のような感じでウマイ。だが、それで限界だった。高山グリーンホテルの好意を無下にして、オレは泣く泣く退場した。

今日は市内観光をしようと思う。いや、昨日も「市内」観光ではあったのだが。広すぎるて、高山市。市街観光といったほうが適切か。お腹もひと段落したのでとりあえずホテルを出た。雨は降っていなかった。ラッキー、と、思うじゃん?この時折りたたみ傘を持って行かない選択をしたことを、この後、オレは後悔することになる。

とりあえず、昨日の夜と同じように陣屋前に出ようと思う。高山陣屋の脇にみたらし団子の屋台があったのを、昨日のオレは見逃さなかった。食い意地の張ったオレは、朝食をたらふく食った後でもこの調子なのであった。昨日歩いたのは夜だったので、陣屋に至るまでの道に何があるのかほとんど見ていなかったが、朝に見るといろいろな発見がある。地銀の大垣共立銀行や地元の時計屋、酒屋や床屋なんかが目に入った。観光地の中にも地元の人々の生活が息づいているのがわかって、オレは勝手にうれしくなった。

高山陣屋前に出ると、陣屋の敷地内にたくさんのテントが並んでいるのが見えた。高山には二つの朝市があり、一つが日本三大朝市の一つ、宮川朝市である。そして隠れたもう一つの朝市が、ここ、陣屋前朝市である。高山陣屋のちょっとした広場に設けられているので、5分もあれば一通り回ることができる小さな朝市だ。基本的に飛騨の野菜や果物が売られていて、朴葉味噌などの飛騨名物もちらほら売っている。地元民向けの、本来の意味での朝市といった感じだ。意外なことに、お花を売っている出店もあった。観光客であるオレは果物や野菜を買っていくわけにはいかないので、一通り物色してみたらし団子を食べた。一本90円、お手頃である。おばちゃんが目の前で一本一本焼いてくれる。ちなみにの高山のみたらし団子は甘くない。醤油団子といった感じでどちらかというとしょっぱいが、薄味である。その分餅のうまみが生きている。

中橋を渡って宮川の東側、いわゆる古い街並みと呼ばれている上三之町に入った。この町は国鉄が昭和45年に始めたディスカバージャパンという企画によって脚光を浴び、高山市市街地景観保存条例の制定のきっかけになったそうだ。以来高山の顔ともいうべき観光スポットとなっている。整然と古民家が並んでいて、道幅の狭さも相まって、古い街並みがどこまでも伸びているような錯覚に陥る。ただ美しい。側溝を流れる水ですら非常に清らかで、清流に育まれた街といった感じだ。完璧だ。まだ10時ぐらいだったが、行列の出来ている店もちらほら見かける。こんなに美しい場所が目の前にあるというのに、不思議なためらいを感じてしまう。適切な表現なのかわからないが、美観も美食も揃っていて絶対に楽しめるとわかっているからこそ、足を踏み入れるのがもったいないという感覚だった。