鹿島・香取神宮巡礼記③ 

腹ごしらえを終えて、いよいよ香取神宮に参るッッ!

ぐるりとらせんを描くような参道を登ってゆく。意外と人がいて、にぎやかだ。年末だったのでお参りに来る人が多かったのだろうか。大きな石灯篭がいくつも並んでいる道を上っていると、立派な門が見えた。重要文化財に指定されているらしい。真っ赤な拝殿にお参りして、お守りでも買って帰ろうかと思ったが、御朱印の文字が目に入った。御朱印、よく神社のお参りをした人が好んで集めるというアレか。よく神社で御朱印はスタンプラリーではないのでちゃんとお参りしてくださいとか書いてあるアレか。寺社ファンに片足突っ込んでる身としては、御朱印集めをせねば寺社巡りが趣味とか口が裂けても言えない気がしてきた…。かくして2500円で御朱印帳を購入したオレは、見事寺社仏閣重課金勢となったわけである。お前も御朱印者(ゴシュインジャー)にならないか?

伝説でフツヌシとタケミカズチが地震を起こす大鯰を封印した石が境内の中にあるというので探してみた。意外と小さかった。まあ伝説なんてこんなもんかと帰ろうとしたら近くで子猫が毛づくろいをしていたのでそれをしばらく眺めていた。

さて諸君!問題はここからである。鹿島神宮に行くにはどちらにせよ佐原まで行かねばならぬ。バスも通っているが、ここは田舎、そんな都合よく来ない!歩くぞ!オレはこの時、自分の中にドMの才能があることに気が付いたのだった。

佐原高校の前を通り過ぎると佐原の街に入る。ここはかつて水運で栄えた街、江戸時代は交通の要所として大変な賑わいを見せたそうだが、ホントかよと突っ込みを入れずにはいられないほど今はさびれている。人口も車や鉄道ができる前はとても多かったようで、若者の教育に力を入れるべく、前述の佐原高校を誘致したのだとか。確かに佐原高校は今でも県内指折りの名門公立高校のようである。同じ公立進学校出身のオレはとてもうれしい。謎の親近感。

寂れてはいるものの、充分に往時の賑わいを感じさせる歴史ある街並みが観光客を出迎えてくれる。歴史を感じさせる長屋、石造りの洋風建築、立派な蔵。伊能忠敬の生家もある。伊能家は佐原の大地主だったようで、今でもその子孫の方がちらほらと住んでいらっしゃるようだ。伊能忠敬の生家の前には忠敬橋という特徴的な橋がある。この橋は水道橋としての役割も果たしており、佐原村用水を反対側の水田に水をいきわたらせるために建設されたようだ。たまにこの橋からドバドバと水を放水しているときがあるらしい。その様から別名ジャージャー橋というそうな。今回は残念ながらその光景を見ることができなかった。

佐原は町のど真ん中を運河が貫いていて、その両岸に昔からある古い商家が立ち並ぶ大変風情のある町であった。かつてはこの運河を所狭しと船が往来し、水面が船で埋め尽くされるほどであったという。今でも何艘か船が浮いているのを見ることができ、両岸に植えられた柳の木がかつての面影を偲ばせる。かつて小江戸と呼ばれた町は三つあり、一つが川越、それと栃木県の栃木、そしてここ、佐原である。川越だけがやたら有名だが、この佐原の運河を見るとそのことがとてももったいないと思える。水都佐原、ぜひ皆さんにもお勧めしたいと思うのだが、この町が川越と比べてやたらと寂れていて知名度がない理由は明白である。メチャクチャアクセスが悪い。東京から2時間ぐらいかかる。だがそれだけ時間をかけても訪れる価値は十分ある。おすすめ穴場観光地だ。

運河沿いを探索して、佐原名物「すずめ焼き」を扱う麻生屋という店に入った。中は広々としていて、いろいろな川魚の佃煮が並ぶ。すずめ焼きといっても雀を焼いたものではなく、その正体は川魚の佃煮なのである。すずめ焼きの由来は、昔、このあたりの殿様がフナの佃煮を見て、すずめを焼いたものだと勘違いしたことからこの名がついた。フナだけでなく、タナゴやワカサギなど、川魚の佃煮全般をすずめ焼きと呼ぶようになった。お土産に一つ買おうと思ったのだが、思いのほか値が張る。すずめ焼きだけにすずめの涙ほどの小遣いしか持ち合わせていなかったオレは、仕方がないのでワカサギの佃煮がいくつか入った小さな子袋を買っていくことにした。あとで家に帰って食べてみたが、ビールととても相性がいい。今度は奮発して他の魚も買ってみようと思う。

佐原はかつて醤油の醸造でも有名な町だったようで、醤油会社がなくなった今でも醤油を売りにしているようだ。そういうわけでネットで醤油ジェラートなるものが佐原にあることを知ったオレはそれを探すことにした。何故かどこかの駐車場の料金所で売っているそうなのだが果たして・・・。と思ったら運河を横切る一番大きい道路を少し西側に入ったところで発見した。ホントに駐車場でジェラートを売っている。どうやら出川哲郎もこれを食したらしく、現場にはスイカステッカーが遺されていた・・・。「すいませェん」と呼びかけると眼鏡をかけたおばちゃんが顔を出した。400円でこれを購入、いざ実食。うむ、甘いが主体だが醤油の味をしっかりと感じ、甘さとしょっぱさを両立させたクセになる味である。