奥美濃ぐじょのナアー紀行①

2023年9月4日

やあ、オレだ。久しぶりすぎて諸君にとって本州に上陸しない台風と同じくらいどうでもいい存在に堕してしまったヤカタだ。こんなことを言っていたら沖縄県民にトンファーでタコ殴りにされた挙句ゴーヤチャンプルーの具材にされて泡盛のお供として提供されてしまいそうなのでこれ以上は言わないが、台風、やばかったね!!

てなわけで今回の旅行について話そうと思う。オレは岐阜県郡上に行ってきたのである。お目当てはもちろん郡上おどりである。残念ながら郡上おどりには台風のせいで参加できなかったが、もう一つの徹夜おどり、白鳥おどりには参加できた。そこらへんも含めて奥美濃(主に郡上市に当たる地方のことをそう呼ぶらしい)の魅力を語るからよろしくな!

旅行当日、例によって一睡もできなかったオレは始発の新幹線で名古屋に向かった。新幹線の窓から太平洋側を見ると、とんでもねえ雲が立ち込めている。台風7号の本州接近に伴い、東海・近畿地方の天気は激ヤバな見込みだ。そんななか、徹夜おどりというやつに参加したくてたまらないオレは台風なぞお構いなしに勇猛果敢なサムライのごとく敵地に乗り込みつつあった。名古屋から岐阜まで東海道線の特快に乗り、そこから美濃太田まで多治見行の高山本線を走る。美濃太田で長良川鉄道に乗り換えるために下車したが、なんとホームの反対側には高山行の車両が!ヒダの摂取量が不足していたせいで手足が震えるなどの禁断症状が出ていたオレは危うくコイツに手を出しそうになったが、中学校の薬物乱用防止教室の講師の言葉を思い出し、固い意思でこれを断った。まったくヒダの依存性は恐ろしいものがある。ヒダにイッてみな!トブぞ!

あんまりふざけていると次回高山を訪れた際に飛騨人によって漬物ステーキの具にされて山車辛くちの肴として美味しくいただかれてしまっているオレの姿が脳裏によぎったので話を進めようと思う。長良川鉄道は高山本線と同じくディーゼルカーであるようだ。電化されていない路線が、奥美濃がいかに秘境であるかを物語っている。切符を買おうとしたら、券売機が札じゃないと入金できないとんでもないポンコツだったので、二千円を入れて1380円の郡上八幡行の切符を購入した。小銭、あったのになあ!

いざ乗り込んでみると中にはそれなりに客がいた。乗車率80%といったところか。お盆の時期だし、それに郡上踊りに参加しようという人もいたからかもしれない。いずれにせよ単線かつ一両編成の路線にしては乗客の数が多いな、といった印象だった。観光客もいるようだったが、地元の人らしき人のほうが多かったと思う。もしかしたらこの人たちの何人かは顔なじみ同士なのかもしれないと想像してみる。

前述のとおり、座席はほぼほぼ埋まっていたので立つことにした。折角なので前面の景色も見たい。ワクワクしながら窓の外を見ていると、ほどなくして列車は動き出した。乗客には単語帳を広げる高校生、外国人観光客の二人組、地元に帰省してきた若いやつ、家族旅行中の父親と小さな兄弟、散歩の足として乗り込んだ爺などいろいろだ。2,3駅乗ったら降りる人もいれば、郡上八幡やその先まで行く人もいた。

美濃太田を出発すると、一瞬で夏の景色に包まれた。眩しいほどの新緑、黄緑、そして青空!これから台風が来るなんて信じられないほどの快晴だった。田園とまばらに家が並ぶ住宅地を滑るように走る。大きめの家庭菜園で夏野菜を育てている。なんだか木造の駅のベンチに座ってリラックスしているおっちゃんが妙にサマになっているので思わず駅舎の風景と一緒に写真に収めてしまった。なぜ田舎の単線路線の風景はこんなにも心を動かされるのだろう。

関駅に着くと、今まで一両編成だったのがもうひと車両連結して2両編成で走るようだ。観光列車ながら号というらしい。オレはそのことを全く知らずに乗っていたが、関駅に着くと、なるほど、もう一両スタンバイしている。ガタンと振動が車両に走ると、車掌や駅員がワタワタと作業をしだしてガッチャンコ、2両編成になった。バスガイドならぬトレインガイドのおねいさんも乗車していよいよ観光列車らしくなってきた。一両だと窮屈で暑苦しく感じた列車も、二両になると涼しく開放的な雰囲気だ。事実、二両目の車内は窓が閉まっていてクーラーがしっかりきいていた。一両目があまりにも暑かったので、長良川鉄道はクーラーをつける金もないのかとローカル線の寂しすぎる懐事情に勝手に哀れを感じていたのだが、きっと都会のもやしっ子には岐阜の暑さが堪えていただけなのだろう。うん。モヤシ男は太陽の熱から逃れるために急いで2両目に避難した。

関駅を出発すると、ガイドのきれいなおねいさんが車窓から見える沿線の風景についていろいろ説明してくれるようになる。でも、ディーゼルのモーター音があまりにも大きいのでよく聞こえない。長良川についていろいろ話してくれているのは分かった。長良川の橋を渡ると、ガイドの説明に沿って走行速度を落としてくれる。おかげでじっくりと長良川の風景を楽しむことができた。台風前なので川の水は濁っておらず、日本三大清流の美しい姿が姿を現す。台風が来る前に今のうちに楽しんでおけと言わんばかりの青い空である。川にはラフティングをしている人々もいた。今日ならセーフだろう。今日ならね。