飛騨高山旅行記⑤ 高山グリーンホテル

夕飯を済ませたオレは、ゴキゲンでホテルに戻ってきた。高山グリーンホテルには旧館の天領閣と、新館の桜凛閣がある。今回オレが泊ったのは天領閣だ。しかし旧館といっても綺麗に管理されており、古めかしい感じは一切なかった。新館だといわれても疑わないレベルである。部屋に戻るとミネラルウォーターが置いてあるのに気が付いた。どこのホテルでも同じサービスがあるが、頻繁に水分を補給する身としてはやはりありがたい。飛騨の水、500mlである。テレビの下の戸棚にお茶パックと湯呑、そしてお楽しみの茶菓子がある。本来は入浴中の低血糖を防ぐため、大浴場に行く前に一服するのが望ましいのだが、オレは愉しみは後に取っておきたいタイプなのだ。それにオレは今、早く温泉に浸かりたくてウズウズしている。

タオルと着替えを背負って大浴場へと急ぐ。エレベーターを一階で降りるとすぐ横に大浴場の入り口があり、その脇に牛乳の自動販売機を発見。これは風呂上りが楽しみじゃあないですか。入り口を抜けると、畳敷きの広い部屋に出る。その奥に男湯女湯それぞれの入り口があった。暖簾をくぐろうとすると、どこからか虫の声が聞こえてくる。ふと音の聞こえてくるほうを振り返ると虫かごがあり、その中で鈴虫が飼われていた。うん、よくわからんが風物。

脱衣所に入るや否や脱ぎ、生まれたままの姿で走り出す。大浴場へ繰り出して、シャワーを浴びていざ入浴。極楽は、いつだって湯船と共にある。なんかテンションが上がっちゃったので、一人で流れるプールを作り出した。他に誰もいなかったのだ、許せ。ひとしきり流れに身を任せてプカプカやっていたので、いよいよ露天風呂に入ることにする。露天風呂は大きい湯船とバブルバスがあった。夜空を見上げてゆったりと浸かっていると、なんとなく物寂しい気持ちがした。もうすこし入っていよう。

風呂から上がったオレはロビーのソファにどっかりと座っていた。片手にはもちろんコーヒー牛乳。全身の血管を血がけたたましい音を立てて巡っているのを感じる。血の巡りが良すぎるあまり、心地いいほど体が火照っている。温泉こそ至高。そして飛騨牛乳を使ったコーヒー牛乳がこれまたウマイ。至上、至福、至高。永遠にこうしていたくなる。うだうだとそんなことを考えていたら、目の前に珍妙な像が飾ってあるのに気が付いた。足がやたら長いオッサンみたいな像、腕がやたら長いオッサンみたいな像。なんじゃこりゃ。この南太平洋のどっかの島で祀られてそうな人形は。好奇心の強いオレはソファから立ち上がってふらふらと近づいてみる。ふんふん、どうやらこいつらは足長手長という二体で一組の妖怪だか神様みたいなものらしい。足長は、長い脚で海を歩き回ることから海の幸を表し、手長は、長い腕で木の実を収穫することから山の恵みを表す。高山祭の屋台(山車)の一つ、恵比寿台(えびすたい)に彼らをかたどった彫刻が施してあることから、高山のシンボルの一つになったそうだ。街中でも所々で彼らを見つけることができる。彼らのユーモラスな姿は、飛騨高山という町が摩訶不思議で神秘的な雰囲気を醸し出すのに一役買っているような気がする。

体をポカポカさせて部屋に戻ったオレ。もう寝てしまってもよいのだが、もう少し旅先の夜を満喫したい。オレにはまだ茶菓子があるじゃないか。さっそくケトルで湯を沸かし、飛騨名産白川茶を淹れる。ちなみに白川茶は名古屋ー高山間にある白川という地域でとれる茶だ。高山本線にも白川口という駅がある。車窓からも茶畑を見ることができるので、探してみてはいかがだろうか。そして、じゃじゃーん、飛騨の栗羊羹「天領閣」。うまい。白川茶もちゃんとうまい。それからしばらく「ひぐらしのなく頃に」の「you」を聴きながらゴロゴロしていた。おやすみ、飛騨。

飛騨高山旅行記⑥につづく…のか?